切端咬合は、上顎の前歯と下顎の前歯の先端部分同士が触れ合う歯列不正です。
本来は、上顎の前歯が下顎の前歯の先を覆うように噛み合っているのが正常ですから、先端同士が触れ合っているのは良くない噛み合わせとなります。
現在、切端咬合を改善するため、いくつかの治療法が開発されています。
今回は、当院でおすすめしている切端咬合の治療法
セラミック矯正
セラミック矯正は、セラミッククラウンを装着することで、噛み合わせを改善させる矯正治療法す。
クラウンという被せ物を利用して歯並びをきれいに見せるので、補綴矯正とも呼ばれています。
なお、歯を移動させる一般的な矯正治療は、補綴矯正に対し歯列矯正といいます。
メリット
歯列矯正では歯の色や形まで整えることはできませんが、セラミック矯正ならセラミッククラウンを使いますので、歯の色や形も自在に整えることができます。
歯列矯正では歯の色や形は変わりませんから、変色歯や奇形歯があってもきれいに整えられる利点がセラミック矯正にはあります。
また、基本的には歯を削って歯型を取れば、その次のときにセラミッククラウンが装着されて完成します。
通常、大人の歯列矯正では治療に2〜3年はかかるので、セラミック矯正は治療の期間や治療の回数が少なく抑えられるのも利点です。
デメリット
セラミック矯正ではセラミッククラウンを装着しなければなりません。
歯をそのままにセラミッククラウンをつけることはできないので、歯を削ります。
健康な歯を削らなくてはならないのが、セラミック矯正の難点です。
歯の傾きが強い場合、削る量も多くなるので、歯がしみて痛くなるリスクが高まります。
また、セラミッククラウンは保険診療の前歯部用の被せ物より長持ちしますが、欠けたり割れたりしないわけではありません。
セラミッククラウンの破損のリスクや外れるリスクがあるのもセラミック矯正の難点のひとつです。
加えて、歯の本来の向きと違う方向から噛み合わせの力が加わるようになるので、歯に加わる負担が大きくなるのもセラミック矯正ならではの難点です。
顎矯正手術
顎矯正手術は、顎の骨格に異常のある不正咬合で、骨格の形や大きさを整えるために行われる骨切り手術です。
下顎骨なら下顎枝矢状分割術、下顎枝垂直分割術、上顎骨ならル・フォーⅠ型骨切り術などが挙げられます。
下顎骨、もしくは上顎骨だけ骨切り手術をすることもあれば、上顎骨と下顎骨の両方に骨切り手術をすることもあります。
もし、顎の骨格に異常があり、お顔の輪郭が気になっており、そこも整えたいような切端咬合の治療では、骨格を整える必要があるので顎矯正手術も行われます。
メリット
顎矯正手術を受けると、顎の骨格の形や大きさも改善できます。
骨格の異常を改善できるので無理なく歯並びを整えられます。
顎変形症という診断が下されますと、保険診療で手術と矯正治療を受けられることもあります。
デメリット
顎矯正手術は、顎の骨格の形を整えるので、入院して全身麻酔をかけて行われるかなり大変な手術です。
術後の腫れや痛みもかなりあります。
治療期間は、手術の前と後に矯正治療が必要なので、かなり長くなります。
マウスピース矯正
最後にご紹介するのが、近年注目されている新しい矯正治療法であるマウスピース矯正です。
コンピューターを使って、歯の移動による歯並びの変化をシミュレーションし、シミュレーション結果に基づいてマウスピースを自動的に製作するのが特徴です。
マウスピース矯正では、マウスピースを一定の間隔で新しいものに交換し続けることで、歯を移動させて歯並びを整えます。
ただし、残念ながら切端咬合の治療にはおすすめできません。
マウスピース矯正は、歯を移動させるとき、歯が傾きながら動く傾斜移動になりやすい傾向があります。
歯をきれいに並べるなら、平行に移動させるのが理想的です。
移動距離が短いなら、少し傾斜しても問題にはなりませんが、抜歯してスペースを確保しなければならない場合、移動距離が長くなりますので、傾斜移動は適していません。
切端咬合の治療では、歯を並べるスペースを確保するために移動距離が長くなることがあり、その点からマウスピース矯正は採用しにくいです。
また、インプラント矯正や顎矯正手術にもマウスピース矯正は対応していないので、切端咬合の治療にマウスピース矯正は適しているとは言い難い矯正治療に当たります。
まとめ
今回は、切端咬合の治療法についてお話ししました。
切端咬合の治療は、大人と子供で違います。
歯性下顎前突症の治療法は
①マルチブラケット矯正
②マウスピース矯正
③インプラント矯正
大人の場合の選択肢としては、
①セラミック矯正
②顎矯正手術
の2つをおすすめしています。
切端咬合の症状に応じて適切な方法を選ぶことが大切なので、どの方法が適しているのかは、歯科医師とご相談ください。