受け口は、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前にある噛み合わせのことで、歯科医学的には下顎前突症とよばれています。
受け口には、食べ物がかみにくい、はっきり話しにくい、顔つきにコンプレックスを感じやすいなどの数多くのデメリットがある反面、メリットはありません。
どうして、デメリットが目立つ受け口になってしまうのでしょうか。
そこで今回は、受け口の原因についてお話しします。
先天的原因
先天とは、生まれつきを意味する言葉です。
すなわち、先天的原因とは、生まれつき備わっている原因ということになります。
骨格性
骨格性とは、骨格に原因があるという意味です。
顎の骨格に原因のある受け口は、骨格性下顎前突症とよばれています。
上顎骨の成長発育が下顎骨と比べて弱い、反対に下顎骨の成長発育が上顎骨より過剰であると骨格性の下顎前突症になります。
ご両親に骨格性の下顎前突症がみられると、そのお子さんにも生じることが多いです。
歯性
歯性とは、歯に原因があるという意味の言葉で、歯に原因のある受け口を歯性下顎前突症といいます。
生まれつき一部の歯がない歯の先天欠如、歯のサイズが小さい矮小歯など、歯にはさまざまな奇形があります。
歯の先天欠如により上顎の歯の数より下顎の歯の数の方が大きくなる、上顎の歯の矮小歯により下顎の歯の方が大きくなるなどの理由で、前歯の噛み合わせが受け口になることがあります。
顔面先天奇形
顔面に生じる奇形は色々ありますが、受け口に最も関係性が高い奇形が、唇顎口蓋裂という病気で、500人に1人ほどの割合で発生します。
唇顎口蓋裂は、生まれたときに、唇から上顎骨まで割れ目が生じている奇形です。
唇顎口蓋裂では、上顎骨の割れ目の部分の歯が元々ないだけでなく、上顎骨の成長発育が弱くなってしまいます。
下顎の骨格の成長発育には影響がないので、唇顎口蓋裂の多くは、受け口になってしまいます。
後天的原因
後天的原因は、成長発育の過程で受け口が生じる原因を意味しています。
不良習癖
不良習癖とは、歯並びを悪くさせてしまうさまざまな癖を意味する言葉です。
舌癖(低位舌)
受け口を引き起こす代表的な不良習癖が、舌癖、すなわち舌の癖です。
舌の先端は、上顎の前歯の裏側の歯肉あたりに触れるのが正しい状態です。
ところが、舌先が下がり、下顎の前歯の裏側に当たっている方がいます。これを低位舌といいます。
舌癖(舌突出癖)
受け口の原因となる舌癖は、低位舌だけではありません。
舌突出癖という舌を前に伸ばす癖もあります。
舌突出癖があると、舌が前歯を前方に向かって押さえます。
上顎と下顎の前歯が、前に向かって傾き、開咬という上下の前歯が触れ合わない噛み合わせになります。
このとき、下顎の前歯の方により大きな力が加わっていると、下顎の前歯の傾きの方が大きくなるので受け口になります。
唇を噛む癖
上口唇を噛む癖があると、上顎の前歯が唇によって内側に押される反面、下顎の前歯が外側に向かって傾くため、受け口になります。
唇を噛むと言っても、血が出るほど力強く噛むというわけではなく、前歯で唇を挟むと言った程度の力です。
それくらいの弱い力でも、この癖を続けていると受け口になってしまいます。
ちなみに、下口唇を噛む癖の場合は、反対に上顎の前歯が前に傾き、下顎の前歯が内側に向かって倒れるので、出っ歯になります。
口呼吸
本来、ヒトの身体は、鼻で呼吸するようになっています。
口でも息をすることはできなくはありませんが、本来の息の仕方ではありません。
口呼吸は、鼻ではなく口で呼吸するのが常態となっている癖をいいます。
舌先を上顎の前歯の裏側に当てて、口で息を吸い込もうとしてみてください。
舌が邪魔をして息が吸えないはずです。
口で呼吸をするためには、舌を下顎の前歯の裏側に当てる、つまり低位舌にしなければなりません。
このため、口呼吸を続けていると、受け口になります。
なお、口呼吸の原因の多くは、鼻で呼吸ができないことが背景にあります。
アレルギー性鼻炎や花粉症などによる鼻づまり、蓄膿症、扁桃腺の肥大症などです。
こうした病気をお持ちの方は、耳鼻咽喉科で診てもらうようにしてください。
まとめ
今回は、受け口の原因についてお話ししました。
受け口の原因は、先天性原因と後天性原因の2つに分けられます。
先天性原因は、
①骨格性
②歯性
③先天奇形
後天的原因は、
①不良習癖
②口呼吸
などが挙げられます。
先天的原因は、ご自身で対策を講じることは難しいですが、後天的原因ならそうではありません。
もし、ここに挙げた不良習癖や口呼吸などに心当たりのある方は、受け口になる可能性が高いです。
早めに医師や歯科医師の診察を受けることをおすすめします。