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監修:顧問指導医: 永山 幸
資格: 日本補綴歯科学会会員 / 日本口腔インプラント学会会員 / 日本抗加齢医学会会員
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下顎の前歯の方が、上顎の前歯よりも前に出ている噛み合わせを、反対咬合といいます。
反対咬合は、噛み合わせが悪く食べ物が噛みづらい、はっきり話せない、歯磨きがしにくいので虫歯や歯周病になりやすい、横顔がきれいでないなど、さまざまな悪影響を及ぼします。
反対咬合は自然に治ることはないので、何らかの治療が必要です。
そこで今回は、反対咬合の治療について、大人の方向けの治療法をご紹介します。
歯の位置や傾きなどに原因がある反対咬合を歯性下顎前突症といいます。
歯列矯正は、歯性下顎前突症の改善に適した治療法です。
マルチブラケット矯正は、歯の表面にブラケットという金具をつけ、ブラケットの溝を利用して全ての歯に形状記憶合金で作られたアーチ状のワイヤーを通す矯正治療です。
このワイヤーの弾力性を利用して歯並びを整えるので、ワイヤー矯正ともよばれています。
100年以上の歴史があり問題点もほぼ出尽くされ、反対咬合だけでなく、ほぼすべての歯列不正に使える汎用性の高さが利点です。
一方、目立ちやすい、食事や歯磨きがしにくいなどの難点もあります。
歯の色に合わせたブラケットを使ったり、歯の裏側にブラケットとワイヤーをつけたりすることで目立ちにくくするなど、改良も続けられています。
マウスピース矯正は、マウスピースを矯正装置として利用する矯正治療法です。
このマウスピースを定期的に新しいものに交換することで、少しずつ歯を移動させて歯並びを整えていきます。
マウスピース矯正で使うマウスピースは、とても薄い上に、透明度も高く、歯を動かすために歯にしっかりとフィットしています。
このため、マウスピースをつけていても一見しただけではわからないほどです。
また、マウスピースはご自身で取り外せますので、食事や歯磨きのとき外して、矯正治療を受ける前と同じように食事や歯磨きをしていただけます。
このように、マウスピース矯正には目立ちにい、日常生活に影響しにくいなどの利点があります。
一方、マルチブラケット矯正と異なり、ご自身でマウスピースを管理しなければいけない点が難点です。
インプラント矯正は、歯科用アンカースクリューという小さなネジのようなものを顎の骨に埋め込み、ここにゴムをかけて歯を移動させる矯正治療法です。
一般的な矯正治療では、大臼歯という最も奥の歯を支えにして、そのほかの歯を移動させて歯並びを整えていきます。
このため、大臼歯を動かすことは任意に困難ですし、大臼歯が反動で動いてしまうと矯正治療自体も難しくなるため、あまり大きな力をかけることはできません。
一方、インプラント矯正なら、大臼歯の代わりにアンカースクリューを支えにして歯を移動させます。
大臼歯を後ろに移動させるなどの従来の治療では難しかった歯の移動もできますし、最適な強制力で歯を移動させられるので治療の効率もとても高くなります。
骨格に異常があり、これが原因となって反対咬合になっている場合を骨格性下顎前突症と言います。
骨格性下顎前突症の改善には、顎の骨切り手術が必要です。
いくつかの方法がありますが、いずれの方法も入院の上、全身麻酔下で行う手術となります。
なお、顎矯正手術では、実際の外科手術のほか、歯列矯正や顎間固定という処置も欠かせません。
下顎骨に対する骨切り手術は、下顎枝矢状分割術(SSRO)や下顎枝垂直分割術(IVRO)があります。
下顎枝矢状分割術は、下顎枝という下顎骨の後ろの立ち上がっている部分で下顎骨を分離し、下顎枝の前方部分である下顎骨体を前後に移動させる手術です。
下顎枝垂直分割術も、下顎枝のところで下顎骨を分離させる手術ですが、下顎枝の分割位置、分割形状に違いがあります。
反対咬合というと下顎骨の形や位置などに目が向きがちですが、同時に上顎骨の形や位置に異常が起こっていることも珍しくありません。
この場合は、下顎骨の骨切り手術に加え、上顎骨の骨切り手術も行われます。
反対咬合の場合の上顎骨の骨切り手術としては、ルフォー(Le Fort)Ⅰ型と呼ばれる骨切り手術が用いられます。ル・フォー(Le Fort)Ⅰ型骨切り手術は、お口の中から切開して上顎骨を鼻の下で分離させて、上顎骨を移動させて固定する手術です。
骨切り手術では分離した顎の骨がずれないように、チタン製のミニプレートなどを使って、顎の骨を固定します。
それだけでなく、骨がしっかりとくっつくためには、術後の安静を図ることも欠かせません。
そこで、手術後しばらくの間、上顎の歯と下顎の歯を結びつけて、お口を開けられなくする顎間固定という処置が行われます。
顎間固定中は、口が開けられないので、流動性の高い栄養剤などによる食事となります。
顎の骨の骨切り手術をすれば、顎の骨格の位置関係が改善できます。
ところが、そのままでは噛めません。
なぜなら、位置関係が良くなかった状態で上下の歯が噛めるように並んでいたため、顎の骨格の位置関係が理想的な位置になると上下の歯が当たらなくなるからです。
そこで、顎矯正手術の前に術前矯正という歯列矯正を行い、骨格の位置関係を改善した後に上下の歯がきちんと噛み合わせられるようにあらかじめ歯並びを整えておきます。
手術後を想定して術前矯正を行いますが、手術後、どうしても噛み合わせにゆるさが生じてしまいます。
そこで、元の歯科医院で術後の矯正治療をしてもらい、上顎と下顎の噛み合わせを微調整します。
今回は、大人の方の反対咬合の治療についてお話ししました。
反対咬合の治療は、その原因から歯性下顎前突症と骨格性下顎前突症に分けられます。
歯性の反対咬合の治療は歯列矯正、骨格性の反対咬合の治療は、術前後の矯正治療と顎矯正手術、そして顎間固定です。
反対咬合にお悩みの方は、治療法を知るためにまず歯科医院を受診して、反対咬合の原因を調べることをおすすめします。